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強制執行とは
強制執行とは、約束した内容について、約束どおりに、慰謝料や養育費などが支払われない場合に、強制的に相手側の財産を差し押さえ、支払いを実行させる制度です。
離婚時に約束した金銭給付(慰謝料、養育費、財産分与等)を相手方が支払わないため、強制執行するという場面は多く存在します。
強制執行の方法
ただ、一口に強制執行といっても、すぐに実行できるわけではありません。
基本的には、調停や裁判、公正証書などで約束したにもかかわらず、夫側が支払わないといった場合にのみ、強制執行は可能となります。もし、離婚時に約束した金銭給付が口約束だったり、単なる合意書や契約書に記載しただけだったりする場合には、調停や裁判、公正証書を経なければ、強制執行をすることはできません。
ですから、離婚する際に、調停や裁判、公正証書などを作成しておくことが極めて重要となるわけです。
実際に強制執行をする場合、次の書類を整える必要があります。
①債務名義
債務名義とは、調停調書、和解調書、判決書、公正証書などが典型例です。
前にも書きましたが、単なる口約束や夫婦間での文書作成では足りません。
したがって、金銭の支払がある場合には、調停や裁判、公正証書を作成する必要性が高いのです。
具体的には、協議離婚であれば公正証書を、調停や訴訟であれば調停調書や判決書を、整える必要があります。
毎月の養育費の金額が高額でないとしても、支払が終わる最後の時期までとなると非常に高額になります。養育費の支払いを止められてしまうことも多くあります。安易に離婚を急がず、きちんとした手続を踏んでから離婚を成立させることを強くお勧めしております。
②執行文の付与
細かい手続のお話しになってしまいますが、上記①の債務名義に強制執行できる効力を与えてもらうことを言います。例えば、判決であれば、裁判所書記官に執行文を付与してもらいます。公正証書の場合であれば、公証人に執行文を作成してもらいます。なお、調停調書と和解調書の場合には、執行文は必要ありません。
③債務名義の送達証明書
強制執行を開始するには、上記①の債務名義の正本か謄本をあらかじめ夫側に送達しなければなりません。公正証書であれば公証人役場、公正証書以外の場合であれば債務名義を発行した裁判所において、相手方への送達を申請します。
強制執行の申立てには、法的知識や面倒な手続が必要とされています。まずは専門家にご相談することをお勧めします。
強制執行の対象となるものは?
強制執行を実行する場合、夫側の財産を押さえることになるのですが、夫側のどの財産を押さえるのかという点は、実は申し立てる側において特定しなければなりません。
典型的な強制執行の対象は、次のとおりです。
・給与(会社勤務の場合)
・会社の売上(自営業の場合)
・預貯金
・土地や建物などの不動産
・家財道具や自動車
したがって、離婚する際には、夫がどこで勤務しており、どの銀行(支店)に銀行口座を持っているのか把握しておく必要性が高いこととなります。特に、離婚後に夫の勤務先が変わるような場合や、転居などに伴い普段使っている銀行口座が変更になる場合には、要注意です。