裁判離婚

裁判離婚とは、夫婦間の話し合いによる協議離婚、家庭裁判所における調停離婚を経ても、離婚が成立しない場合に、離婚を求める側が家庭裁判所に離婚訴訟を起こすことを言います。

離婚の場合、離婚調停を経た後でなければ、離婚訴訟を起こすことはできません。

離婚訴訟を起こす側を原告、起こされる側を被告と呼びます。

どのような場合に離婚訴訟まで発展するかというと、調停で離婚できなかったケースですから、お互いの対立が深い場合が多いです。具体的には、次のような場合に離婚訴訟に発展することが多いです。

・そもそも離婚について意思が合致していない

・親権者の指定について合意が取れない

・財産分与の金額について納得がいかない

・慰謝料を請求したが、不貞をしていないなどと反論されている

・慰謝料を請求したが、金額について折り合いがつかない

これらの場合、離婚訴訟に発展するわけですが、話し合いをベースとする離婚調停と異なり、離婚訴訟は裁判であって証拠に基づいて事実関係の審理がされていきます。したがって、何らかの事柄について当事者双方が合意に至らない場合でも、例えば、どちらか一方が離婚に合意していない場合でも、裁判官が離婚を認める判決を下せば、法的強制力によって離婚することができることとなります。

最近は、協議段階や調停段階でも弁護士に依頼する方が増加していますが、裁判離婚は、それまでの協議や調停と異なり、相当程度の法的知識と技術や経験が必要とされます。裁判離婚を行うのであれば、初期の段階から弁護士に依頼することをお勧めいたします。

 

裁判離婚の条件

前提として、離婚調停があり終了していることが条件とされています(調停前置主義と言います。)。

その上で、裁判離婚はどのような場合も訴訟を起こせるというわけではなく、ひとつ以上の離婚事由に該当しなければなりません。

離婚事由は、5つの離婚原因に分類されます。

①不貞行為

不貞行為とは、肉体関係を伴ったいわゆる浮気や不倫のことです。一時的なものか継続しているものかを問わず、1度でも肉体関係があれば不貞行為となります。なお、不貞行為があった場合には、夫や不貞相手に対し慰謝料請求をすることが可能となります。

②悪意の遺棄

夫婦は同居して、お互いに協力し合い扶助する義務を負いますから、一方が扶助しない場合には、離婚するための理由となります。例えば、病気で看護を必要としているのに看護しないなどです。ただし、悪意の遺棄と言えるのは、合理的な理由がない場合に限られます。

③3年以上の生死不明

3年以上連絡が途絶えて、生死も不明な場合です。相手の生死が3年以上も不明であれば、訴訟を提起して離婚することが可能ということになります。なお、生死不明が7年以上に至っている場合は、失踪宣告の申立てという手続をとることができます。この場合、相手が死亡したものとみなされることとなります。

④回復の見込みがない強度の精神病

夫が精神病になったというだけでなく、回復の見込みがないほど強度の精神病を患ってしまった場合、夫が離婚したくないという意思をもっていたとしても、裁判で離婚することが可能となってきます。具体的には、医師による診断や鑑定、それまでの介護や看護の状況、離婚後における相手の治療や生活などから、裁判官が判断して決めることとなります。

⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由

これらの①から④に該当しない場合でも、婚姻を継続しがたい重大な事由がある場合には、離婚原因とされ、離婚することが可能となってきます。実際の裁判でも、多くのケースはこの⑤を主張しています。

婚姻を継続しがたい重大な事由の具体例は、次のようなものが典型的です。

・性格の不一致

・夫の親族とのトラブル

・多額の借金

・宗教活動にのめり込む

・暴力(DV)

・ギャンブルや浪費癖

・性交渉の拒否

・犯罪による長期懲役

裁判離婚の手順

裁判離婚を行うためには、家庭裁判所に対し、訴状を提出します。離婚の場合、身分関係の変動を伴いますから、戸籍謄本も必要書類とされています。本籍地が遠方の場合などは、郵送などで早めに入手しておきましょう。

訴状には、離婚を求める内容や離婚したいと考える理由を詳細に記載する必要があります。また、裁判を実際に進めていくには、かなりの法的知識と経験が必要ですから、早期に離婚に強い弁護士に相談して依頼すべきです。

■裁判離婚の進行

裁判離婚は訴訟ですから、時間がかかります。1年程度はかかると考えておいたほうが良いでしょう。

裁判離婚の進行は、通常、次のように進行していきます。

 ① 訴状提出

 ② 期日指定

 ③ 原告が主張書面と証拠を提出する

 ④ 被告が主張書面と証拠を提出する

 ⑤ 上記の③と④を交互に繰り返す

 ⑥ 和解を試みる

 ⑦ 当事者尋問(当事者双方が裁判所に出頭して、裁判所で事実関係の確認を受ける)

 ⑧ 再度の和解が試みられる

 ⑨ 判決言渡し

裁判離婚における和解

離婚訴訟といっても、実際には裁判上の和解により離婚が成立することが多いです。

これは、双方が主張と証拠提出を繰り返した上で、裁判官により裁判官が適切と考える和解条件を示されたり、当事者双方が法的な争点を正しく理解し納得することが多かったりすることが多いからと言えます。訴訟上の和解といえども、裁判所における約束ですから、和解条件に違反があった場合には、判決が言い渡された場合と同様、給与を差し押さえるなどの強制執行をすることができる強い法的効力が認められています。

ただし、判決が言い渡された場合であれば不服申立て(控訴)ができますが、訴訟上の和解の場合には、いったん納得して合意した以上、不服を申し立てることができません。訴訟上の和解をする場合には、慎重にお考えになってから決断すべきと言えます。

裁判離婚の注意点

離婚原因を作った有責配偶者から離婚訴訟を提起したとしても、判決によって離婚が認められることは少ないです。例えば、夫が浮気をしており、その女性と結婚したいがために、夫から妻に対して離婚訴訟を起こしたとしても、離婚はそう簡単には認められません。これを有責配偶者からの離婚と呼びます。

有責配偶者からの離婚訴訟で、離婚が認められるケースは、次のような条件を満たす場合のみと考えられます。

・別居期間が同居期間と比較し、相当長い(10年などと言われることもあります)

・未成熟の子ども(親から独立して生計を営むことができない子ども)がいない

・離婚請求された相手方が精神的、社会的、経済的に過酷な状態におかれていない

弁護士選びのポイント

調停が成立しなかった場合、訴訟となります。
正確には、どちらか、あるいは双方の当事者が訴訟を提起することにより、裁判離婚(訴訟)が始まります。

 離婚訴訟は、必ず離婚調停が成立していないことが必要とされています(調停前置主義)。

 裁判に至ると、相当高度な法律知識と経験が要求されます。したがって、訴訟にまで発展している場合には、弁護士に依頼するのが通常です。

 また、裁判になると、調停とは異なり、裁判官が審理の主体となります。

実際の裁判は、原告が訴状を裁判所に提出することで始まります。被告宛てには、裁判所から訴状が郵送されてきます。その後は、答弁書、準備書面を互いに提出し、あわせて証拠を提出することになります。

 主張と立証が尽きた頃から、裁判官主導のもと、和解協議がされます。

 実は、判決に至るよりも、和解で訴訟が解決することのほうが多いのですが、どのような内容で和解すべきかという点は、それまでに提出された主張と証拠に基づいて、判決の見通しを捉えることが重要となるのですが、このあたりになると経験豊富な弁護士でなければ的確な判断はできないと思います。

 したがって、裁判になった場合、弁護士に依頼することは当然として、どの弁護士に依頼するかという点が重要になってきます。

弁護士を依頼する際は、次のような点をお考えになると良いと思います。

① 弁護士の経験と能力

離婚事件を担当するためには、多くの経験と能力を要します。

経験や実績の少ない弁護士にご自身にとって人生の一大事である離婚問題を依頼すべきではありません。

② 弁護士費用

弁護士費用は一律だとお考えになっている方もいらっしゃると思いますが、弁護士報酬は自由化されていますから、依頼する弁護士によって費用は異なります。

 安ければ良いというわけでもありませんが、また、高ければ良いというわけでもありません。
弁護士によっては弁護士費用を明確にしない方もいますので、実際に依頼をする際は、委任契約書がきちんと取り交わされ、費用が明確になっているか要注意です。

③ 弁護士との相性

離婚事件を解決するためには、特に訴訟まで至っている場合には、少なくとも1年がかかります。
長い時間を共有することになるわけで、ご自身の人生の一大事を委ねることになるわけですから、相性の悪い弁護士と長期間付き合うことは難しいです。

法律相談において、弁護士との相性も気にされると良いでしょう。

冷たかったり、怒り出すような弁護士に依頼すべきではありません。

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